ずっと目指し続けてきた場所がある。
駒沢。
あのグラウンドに立ったことはまだない。
だけれど、ずっとずっと憧れ続けてきた。
沸き立つ観客席。
ベンチで声の限り叫ぶ自分。
鳴り響く試合終了のホイッスル。
走って駆け寄るチームメイトの姿。
そして手にする、「日本一」の称号。
これまで何度も何度も描き続けてきた景色だ。
入部を決めたあの瞬間から、その景色がぼやけることは一度もなかった。
もちろんそれが簡単ではないことは身に染みてわかっていた。
中高の部活でも目指し続けてきたから。
日本一という高い目標を持つことに、見合うだけの行動も想いも時間も必要だった。
マネージャーとして、一部員としてどうあるべきかを嫌と言うほど考え続けた。
自分のやっていることに確信がもてなくても、とにかくやってみる。
一歩踏み出すこと、周りにも見える形にすることで、後戻りできなくして、さらに自分を追い込もうと思った。
高く掲げた理想と、そこに遠く及ばないと思える現状との落差が、私を前へ前へと突き動かしてきた。
日本一を目指すチームのマネージャーがこの程度でいいのか。
チームに恥じない自分でいるんだ。
そう何度も言い聞かせてきた。
それでいて、何にも代えがたいほど部活の時間が楽しかった。
何か少しでも選手のために、チームのためになるのならなんでも出来る気がした。
それが私の幸せだと思えたから。
そうして迎えた最後の一年。
3年間頭に描き続けてきたラストイヤーとは裏腹に、実際は思い通りにいかないことの方が多かった。
年明けから徐々に体調が悪化し、全員が目標に向かって走る中、ついにひとり歩みを止めなければいけない時間があった。
毎日元気にグラウンドに行けること、それが当たり前でないことを痛感する日々。
なぜ、今。
30期のみんなと日本一を獲る。それだけを考えてやってきたのに。
しんどくて苦しくて悔しくて。
どうにもならない現実をなかなか受け入れられなかった。
「誰よりもチームのために」
そう考えてがむしゃらに走ってきたつもりだった。
そんな自分がチームに心配も迷惑もたくさんかけることになった。
毎日流れてくる部活のLINEも、
ひとりベットの中で見る配信も、
みんなが頑張っている投稿も、
見るだけで心が締め付けられた。
ただただグラウンドに行きたくて、みんなと一緒に部活がしたくて、
心ばかりが早く早くと先走って、空回って、それに身体がついてきてくれないことが本当にもどかしかった。
離れたことで、どれほどKULが自分の全てだったかを強く思い知らされた。
それでも、再び歩き出せたのは、
両親がずっとサポートし続けてくれて、
人手が足りなくて大変な中、スタッフのみんなが繋いでくれて、
今年こそはいける、そう信じさせてくれる仲間がいて、
何がなんでも戻りたいと思える場所があったから。
そして、
ずっとずっと追い続けてきた夢の舞台が待っているから。
そんな色々なものに支えられて、今、私はここにいる。
みんなが志高く入部するこの部活だが、もちろん誰しもが4年間毎日全力で走り続けられるとは限らない。
怪我をして離脱したり、体調を崩したり、モチベーションが下がってしまう瞬間もあるだろう。様々な理由で部活を去っていく仲間を見るたびに心苦しかった。
4年間。本当に長い時間だ。
それだけの時間を費やしてきて、ただ「楽しかった」だけで終われるような、そんな簡単な時間は過ごしていない。
それだけ私たちは本気でやってきた。
それぞれがさまざまな想いや葛藤を抱えながら、
人には気づかれないように家でひとり悔し涙を流しながら、
得体のしれない不安やプレッシャーで押しつぶされそうになりながら、
それでも毎日歯を食いしばって、やると決めた過去の自分に負けないように闘ってきた。
それが、この4年間をKULに捧げたことで得た何よりも尊い財産だと私は思う。
頑張れば頑張るほど、想いが強ければ強いほど、うまくいかなかった時、辛くなるし、逃げたくなる。
特にスタッフは、よく言われるように目に見える成果が出るわけではない。
点は取れないし、PDもGBもセーブもできない。
それがわかってて入部した。それがわかっていてもこの部活で日本一を目指したかった。
自分の価値を決めるのは自分自身だ。
自分の存在意義を決めるのも自分自身だ。
何にも正解なんてない。誰にも決められない。
いろんなことがあった。
けれど、今わたしは胸を張ってこの部活を選んだことが正解だったと言える。
ラクロスが好きだ。
マネージャーの仕事が好きだ。
30期のみんなが好きだ。
KULの仲間が好きだ。
私はこの部活が大好きだ。
これまで出会った全ての瞬間が愛おしく、この部活に出会えた自分は心の底から幸せ者だと思う。
渇望し続けた夢の舞台まで、あと少し。
ようやくここまで来た。
過去を懐かしむ時間も、
後悔を思い出す時間も、
私たちには残されていない。
受け継いできたKULのprideを胸に、最後まで走り抜けよう。
2022.09.17 MG 高橋香帆